ホンダ・グレイスのインプレッション
GM4 HONDA GRACE HYBRID IMPRESSION


気が付けばグレイスも走行距離が約3万キロになりました。
納車時1万7千キロでしたので、1万キロ以上を走行した事になります。

ここで現時点でのグレイスのインプレッションでも書こうかなと。

ちなみにグレードは最上級のEX。
メーカーオプションのカーナビ、インターナビが付いています。


一言で言うと良いクルマ。
ホンダの顔とも言えるフィットのセダンバージョンだから普通に走るなら何も意識せず普通に乗れる。
7速DCTの挙動が気になる時もあるけれどすぐに慣れる。
慣れてしまうと非常に走りが気持ち良いし、大変に快適。
のんびり乗ってもいいし気合を入れて走りたい時にも答えてくれる。

オンとオフのどちらにも答えてくれるクルマだから、いろいろな人が乗っても不満なく乗れるクルマに仕上がっている。

内装
内装はミニバンのホンダらしくあちこちに細かい収納が有る…と期待していたのに、物置は小さいコンソールボックスとドリンクホルダー、サイドブレーキレバー横の謎の小さいスペースだけ。

せめて格納式ドリンクホルダーくらい欲しかった。
でもUSBポートが標準で付いてくるからナビアプリ使いながら助手席の人間も携帯電話使える、後部座席のシガーソケットも有るので長距離ドライブは快適に使える。

ただし後部座席は私が頭を打つ。
私が後部座席に乗る時はフリード使うから良いと割り切ったが、ホンダという大メーカーなのだから大人4人(5人)が快適に乗れるクルマを作って当たり前と思うのだが。
インプレッサは後部座席に私が座っても頭を打つ事は無かった。
タコメーターはオートマだから省略されているのではないか…と心配していたが、スピードメーター右側にあるインフォメーションモニターの一機能として存在していた。


厳寒時の快適性については良い部類に入る。
ヒーターもきちんと効くし、寒気が吹き込んでくる事もない。
さらにシートヒーターまで有るし、ヒーテッドドアミラーは吹雪いているときなどには非常に強い味方。
それだけに、何故リアワイパーを装着していないかが謎なのだが…。
走行中にリアガラスへ雪が積もってしまうとサイドミラーでしか後方確認できないのはちょっと困る。

走り
グレイスはインプレッサと比べると速度感に乏しいクルマだから、気がつくと結構速度が乗っていたりする。
これは空力の良さと静粛性の高さ、乗り心地のソフトさに起因するものかな。
だから加速感が乏しく感じるのだけれど、実は信号発進などは後続車を引き離していることが多いので実際は速かったりする。
さらにスピードを感じにくいからドライバーも同乗者も疲労少なく走れる。
高速道路を長距離ダラダラ走っている時には、特に快適性を実感する。


サスペンションの初期当たりはソフトだけど、路面からの入力が大きくなるとギュっと踏ん張るので全然怖くない。
そしてとにかく安定しているのでアクセル踏める。
サーキットのコーナー出口では何の不安もなく、テールが滑る気配すら無くガンガン踏んで行けた。
とにかくフロントは逃げないし、リアもガッチリ路面に張り付く。
しかもハンドリングの中間からでもグイグイ曲がる。
ボディ剛性が非常に高いために高負荷時の車体挙動は大変に正確で、クルマを信頼できる。

乗り心地も大変に良く、フィットハイブリッドと比べると路面の凹凸などを柔らかくいなしているのがわかる。
セダンだから気を使っているとの事で、フィットハイブリッドとの大きな差を感じられる。
良い意味で路面状況に鈍感。
ボディとサスペンションは特筆すべきレベルで、特に高速走行時の直進安定性と車体安定性は素晴らしいの一言。
ロングホイールベースを活かしているし、ホンダらしくビシっと真っ直ぐ走るので気がつくと速度が出ているからオートクルーズで走るのが懸命か。


パワーは過不足ない丁度良い感じで、体感的には2Lの実用ユニットのよう。
アイドリング回転数からほぼ最大トルクを発生するし、5,000rpm付近までトルクが落ち込まない感じ。
ハイブリッドカーなのに何故か高回転型特性(最大トルク5,000rpm、最大出力6,000rpm)のエンジンを搭載していて、高回転でもパワーが鈍る事がないのでブン回すとかなり速い。
普通は低回転トルクを重視するため、NAエンジンでも3,000rpm、ターボエンジンともなると2,000rpm以下で最大トルクを発生する物が多い中で最大トルク発生が5,000rpmなんて極端な特性のエンジンって中々見ない。
DCTは4速までクロスしているため、DCTの超高速シフトチェンジと合わさって加速が途切れない。
またクラッチ式オートマなのでCVTのような高回転域でのパワー抜け感は無い。
加速が途切れない上にフルフラットアンダーフロアなど空力特性が非常に良いため、超高速域でもグイグイ加速する。


実はグレイスで初めて電子制御VSA(Vehicle Stability Assist:車両挙動安定化制御システム)付きのクルマに乗った。
一般的な道路では、例えば峠道を楽しんでいたりするとアンダーステアが強くなる。
これは恐らく速度を落とせという意味でVSAによってアンダーステア特性を作る事により速度超過感を出そうとしているのだろう。
またアクセルを踏み込んだ際のレスポンスが緩慢になる。
おそらくホイールスピンを予測して動作しているのだろうけれど、あまりに緩慢。
しかしトルクで走るようにすると気にならなくなる。
具体的には発進はゆるやかに、そこからジワリとアクセルを踏み込んでやる走り方。
グレイスはアイドリング回転数でほぼ最大トルクが出ているので、トルクでゆったり走るように心掛けると気にならなくなる。
実はこれでも十分に速く、信号発進で後続車を引き離している事が多い。


またECONモードがいわゆる我慢モードでアクセルレスポンスが恐ろしく緩慢にセッティングされているので、これを解除するだけで走りは快活になる。

雪道でのブレーキや減速の時はフットブレーキよりもエンジンブレーキを使ったほうが良いのだけれど、DレンジからLレンジに切り替えると強力なエンジンブレーキを掛けてくれる。

氷結している路面での安心感は絶大で、パドルシフトと併用すればより確実なブレーキ操作が出来る。
そもそもEXグレード以外はパドルシフトが付いていないが、Lレンジの強力なエンジンブレーキは雪道だけでなく下り坂でも有効。

ただし下り坂では細かく車速調整できるSモード+パドルシフトのほうが運転しやすい。

雪道ではVSCが誤作動して動かなくなったりする。
特に雪が積もっている上り坂で起こりやすいが、その場合はVSCをOFFにし、Sモードでエンジン駆動メインにした方が良い。
ディーラーの見解も同じだった。

冬に弱いと噂のハイブリッドカーだったが、新潟でマイナス気温など色々な条件で使用して不便を感じる場面は無かった。
むしろ太いトルクのおかげで雪道は走りやすい。

操作に関しては基本的にフィットセダンなので何も考えず運転しても普通に走るが、上手く走るとなると繊細な操作を求めらる。
アクセル、ブレーキ、ステアリングのどれも繊細に操作しないといけない。
そして教科書的な走りを求められる。
つまりしっかり減速してターンイン、何も起きないと確信できるタイミングでアクセルを踏み込む。
まるでサーキットを走るかのように教科書的な走りをすると、大変に速く舞えます。

インプレッサはドライバーの思い通りに動くマシンだったけど、グレイスはマシンの特性通りに操作するマシンって感じかな。
噂に聞くホンダのドライバビリティとほぼ相違ない感じ。

不満点
気になるというか不満点は以下の通り。
プリウスと同じHシフトパターンは本当に意味不明。
しかもバックが前進方向にレバー操作するので、マニュアルミッション感覚で車庫入れしようとすると前後逆移動する事があって非常に焦る。
オートマならば上からPRNDと並んでいる一直線シフトパターンにして欲しい。
更に言うと、Dレンジの横にシフトレバーを移動してマニュアル操作でシフアップ、シフトダウンできるともっと良い。

また、DレンジとRレンジの切替時に何故か操作をキャンセルされる事が多い。
完全停止して、一旦Nレンジに入れ、シフト切り替えすれば問題ないが…。


最低なのがパドルシフト。
率直に言って付いている意味が無い。
Sモードならば比較的操作を受け付けるけれど、通常モードではシフトインジケーターが点滅するだけでほとんど操作を受け付けない。
機能しない機械ならば装備しないほうが良いし、シフト操作が効かない場合は警報音など視覚以外の方法でシフトチェンジ失敗を教えてほしい。
操作が効かないシフト操作は危険なので、Sモード以外では一切使う事はない。
せっかくエンジンブレーキなどに活用しようと楽しみにしていたのに、非常にがっかりした。
さらにパドルシフトモードキャンセルの方法もないため時間経過でDレンジに戻るのを待つしか無いが、Sモードの場合はマニュアルモード固定のまま。
何らかのマニュアルモード解除方法がほしい。
例えばスバルのように左右のパドルシフト同時操作で解除とか。

もっと言うと、シフトインジケーターは常時シフトポジションを表示して欲しい。

また、シフトスピードを売りにしているDCTだがマニュアルシフトのレスポンスは大変に緩慢。
それでもマニュアルモードが有るだけでぜんぜん違うが。


そしてシートが安物過ぎる。
サイズは小さいし、左右ホールドも乏しいし、特にショルダーのサポート部が無いのは手抜きとしか思えない。
しかも私の体に合っておらず、腰痛が酷い。
クルマとしての性能が大変に良いのに、シートをケチって安物を採用しているので交換必須。
正直シートに搭載されているサイドエアバッグなんていらないから、その分マトモなシートを装着して欲しかった。

総評
グレイスは確かに走りは良いけれど、五感に訴えるものは少ない。
速さ感も少ないし、官能的な走りを楽しむモデルじゃない。
もちろんサスセッティングも良いしパワーも有るしボディ剛性も有るから走ると速いけど、事務的な走りに徹するマシンって感じ。
インプレッサのように走っていて気分が高揚することは無いけれど、気がつくとギュンギュン走っていたりする。

という事で、グレイスは快適にツーリングするのが向いているクルマかな。
サスペンションの限界は恐ろしく高いし、シャシー性能も高いから、気兼ねなく元気に走るには最適なクルマと言える。
ただしドライバーの思い通りに動くクルマではなくマシンの特性通りに動かすクルマ。
好みはハッキリ別れると思う。

とは言え、サーキットでそういった特性が気になるものであって一般道でははそこまで踏み込めない。


グレイスは良い車か?と言われると、良い車だと思う。
乗り出し価格が300万円に到達しそうな車だけれど、フィットと明らかに格の違う快適性能。
これはCセグメントカーと比較しても劣らないレベル。
ホンダらしく高回転まで気持ちよく回るエンジンや路面をガッチリ掴んで離さないサスペンション。
ダイレクトな操作感覚を味わえるこのクラスでは希少なデュアルクラッチ式トランスミッション。
モーターのトルクを活かした力強い加速。
そして実走燃費で平均20Km/L程度の低燃費という経済性。
一番良いのが、5ナンバーという扱いやすいボディサイズ。

様々なワガママをギュッと詰め込んだ、凄く良い車です。
正直なトコロ、インプレッサからの乗り換えでマニュアルミッションからオートマチックミッションへの乗り換えとなるために不安もありましたが、7速DCTは特に不満ないどころか満足度の高いものとなっています。


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